Sheffield Antiques

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2017/12/30
ヴェネツィアの画家ティツィアーノ その2

ティツィアーノの作風は、20代の色彩豊かでみずみずしく明るい色調のものから歳を重ねるとともに、かっ色を帯びた重々しいものへと変化して行きました。多くの天才画家たちがそうであるように、一ヶ所にとどまることなく新しい表現様式を求め続けた結果といっていいでしよう。ティツィアーノはその時々の年齢になって初めて表現可能となる何かを、その画中に込めているように私には思われます。

彼の青春期の代表作といっていい作品は、水の都ヴェネツィア中央部に位置するサンタ・マリア・グロリオーザ・ディ・フラーリ聖堂の中央祭壇を飾る大作「聖母被昇天」です。聖母マリアが天に召されるその時を、ドラマチックな構図と色彩を用いて描いています。多くの文人たちがこの絵より様々なインスピレーションを得ました。音楽家のワーグナーも楽劇「トリスタンとイゾルデ」第3幕を構想中にこの絵に出会いました。彼はそこに描かれたマリアを見て「この聖女はイゾルデそのものだ」と言ったそうです。

画家としての名声が高まるにつれ、16世紀前半の時代に多大な権勢を誇つた人物たち、ローマ法王をはじめヨーロッパ中の王侯貴族から肖像画の制作依頼を受けました。これらは多くの名画となって残りました。ティツィアーノの絵画は、ヴェネツィアの大きな聖堂・教会と、イタリア、スペイン、フランスそしてイギリスの名だたる美術館で鑑賞することができます。

彼の作品の中で、私のもっとも好む絵の一つ「ディアナとアクタイオン」はロンドンのナショナル・ギャラリーにあります。ティツィアーノの晩年の作品(70代前半)ですが、狩猟の女神ディアナが猟犬を伴ってアクタイオンを追い詰め、その命にとどめを刺すべく弓矢を放つその瞬間を、嵐に騒めく森の木々を背景に描いています。

下の絵は東京都美術館で開かれた「ティツィアーノとヴェネツィア派展」のパンフレット表紙を飾った「フローラ」(1515年)です。

 

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