2020/05/18
イギリスの骨董事情 その2

英国人が伝統を大切にするのは何故でしょうか。それは、この国の「大英帝国」と称された17世紀以後の歴史の中で、様々に生み出されてきたそれぞれの時代の産物への、深い洞察と愛情が根底にあるように私には思われます。100年を経てアンティークとなった品物が今ここにある事の不思議を楽しみ、それらが作られた時代背景を理解しようと少しでも努力する、そしてじっさいアンティークの品々を大事に使い続ける慈しみの心をイギリス人は持っているようです。このことが英国をして「アンティーク大国」にしているように思われます。
 
イギリスは、エリザベス一世女王統治下時代のスペイン撃破により、16世紀の世界史に躍り出て以来、その後のヨーロッパの進展をリードする国となりました。18世紀にはじまる産業革命以後は更なる発展をとげ、世界中に多くの植民地を持つこととなります。海上交易を盛んにして世界の海を支配した「大英帝国」の歴史を、今でもイギリス人は誇りに思っているはずです。蓄えられた国富のなかから貴族階級を筆頭に裕福な資本家が多く生まれ、こうした有産階級が英国の上流社会を形成していった事は、みなさんご存知の通りです。
 
英国アンティークを代表するものとして、第一に挙げられるのが銀器の存在です。東洋よりもたらされた紅茶文化の隆盛にともない、茶道具として様々な純銀製品が生み出されました。お茶の席を華やかに彩るティーサービスのセットや、スプーン、ナイフ、フォークなどのカトラリー類の他に、果物に粉砂糖をふりかけるためのシュガーシフタースプーンなどなど。また、テーブルの灯りとしての銀製キャンドルスタンドも多く作られました。少し前の時代まで、通貨の主役は銀貨でした。ですから純銀製のお品物は家の財産と見なされ、大切に守り伝えられてきた事は言うまでもありません。
 
同じく紅茶の席に欠かせないのが、ティーカップやソーサー、ケーキ皿などの陶磁器達です。また、正餐に使用される豪華な大皿、食後のエスプレッソコーヒーに必要な贅を尽くしたサービスセットなどが大量に生産され、人々の暮らしに華を添えました。イギリスには王様はいますが、王立の窯はありません。この国では競争原理が上手く働いて、優れた陶磁器メーカーが次々と現れました。1750年頃より創立された窯のいくつかは、英国を代表する名窯として現在までも存続しています。ボーンチャイナに代表されるような品質改善の努力の積み重ねが信頼を生み、世界に製品を輸出する事によって「陶磁器産業は国の基幹産業である」と認められるまでの発展を遂げました。こうしてみなさんご存知の「Wedgwood」をはじめ「Spode」「Minton」「Doulton」そして「Worcester」などイギリスを代表するメーカーが力を付け活躍の場を広げた時代は20世紀まで続きました。アンティークにたずさわる人間として本当に残念なのですが、21世紀に入った今、これらの陶磁器メーカーはかつての面影もなく、急速にその力と輝きを失いつつあります。
 
次回に続きます。

下の写真はウースターWorcester皿、フェンスパターンです。

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