Sheffield Antiques

sheffield's blog
2018/04/20
カズオ イシグロ作品「日の名残り」の世界

昨年のノーベル文学賞が、日系英国人のカズオ イシグロ氏に決まったとのニュースを聞いて、少なからず驚いた方は多かったのではないでしょうか。私もそういう中の一人でした。以前よりこの作家の名前を聞いた事はあったものの、「作品が映画化されて話題となった文学作家」との認識しか持っていませんでした。ですから受賞の報に接して初めて、この長崎生まれの作家に強い関心を抱くこととなりました。その後、代表作の一つである「日の名残り」の映画作品を見る機会に恵まれました。それからまもなく原作小説を読むこととなりました。

この作品の主人公、ミスター・スティーブンスは名門の英国貴族に仕える執事であり、彼の目を通して第二次世界大戦をはさんでのイギリス、さらに彼のご主人様である貴族の歴史的凋落と、執事としての自分自身の人生の浮き沈みが語られます。過去から現在への時の流れと、今のまなざしを軸として昔を振り返る主人公の追想が、時空を相互にクロスしながらも巧みな文章によって表現されています。

彼のご主人ダーリントン卿は大戦の始まる前、親ドイツ派の人物として英国の政治、外交にも影響力を持つ名門貴族でした。戦後はその行動を非難され、名誉を失ったまま失意の内に生涯を終えます。スティーブンスはダーリントン卿を尊敬し、その決断を常に正しいものとして肯定してきましたが、今はその過ちに気付いており、かつての様々な出来事を回想するのでした。

この小説の大切な登場人物である家政婦長、ミス・ケントンが仕事の同僚である主人公スティーブンスの伴侶となり、彼の人生に最後まで係る関係を持ちたいと希望しながらも、現実には別の選択をして、そのことを時々悔やむ自分にいら立つように、多くの人々は自らの人生を振り返る時、様々な道の分岐点に於いて選んだものを認知するより他はないようです。

人は何を指標として生きるべきなのでしょうか。生涯の終わりが見えてきたと自覚された時、それまでの人生を総括して、何を肯定し或いは否定することが出来るのかを問うとても怖い小説だと思います。しかし別の見方をすれば、これからの長い道のりを歩むであろう若い人達へのメッセージとして、自分の過ちに気付いた時にはそれを素直に認め、そこから新たな地平線に向けて歩み始める事の大切さを示しているのかもしれません。

この作品について、私の場合は映画鑑賞が先で後に原作を読むこととなりましたが、出来れば原作を先に読まれることをお勧めします。その訳は映画の中で主人公を演じる俳優、アンソニー・パーキンスの個性があまりにも強すぎるためです。

当時の執事の、大事な仕事の一つであるとされる銀磨きの場面が小説の中に登場します。イギリス人の銀器へのこだわりが強く印象に残りました。アンティークの銀製品を是非一度使ってみてください。
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